奇書

小栗虫太郎黒死館殺人事件』が三大奇書のひとつだっていうんで読んだ。つまんなかった。
背表紙によれば「悪魔学と神秘科学の結晶」とのことで、確かに情報量はすごいが、僕がその辺に大して興味を持ってないということに尽きるけど、その情報量を押し付けられることの必然性を感じなかった。
探偵役は「元捜査局長の学識高き刑事弁護士」だそうだが、特に魅力の無い人間だった。頭の良い大学にこういう人いるよね、って感じ。学識の高さのための学識の高さ。口癖は「勿論」「当然」「確かに」「相違ない」「どうして〜なもんか」はいはい。人間の内面にえぐり込んでいく方法は面白いけど、説とか例とかを引っ張ってきただけで今目の前で起こっていることを解き明かしたつもりになっている。裏付けに乏しいことが多くて胡散臭さしか残らない。小説だから偶々当たってる、くらいにしか思えない。理屈っぽいわりに殺されるべき人を救えたわけでもないし。でもそもそも探偵小説の探偵ってのは解説とか再現をする役であって、進行中の事件を止める人ではないんだったかな。
不満は欲求のネガ。ま、このあたりが常識人の限界なのだろう。