君の夢を見たので、君のことを書いておきます。

誤解のないように伝えるのが難しい類の話ですが、君ならあまり誤解なく理解してくれるのではないかな。
僕らはどこか似ている部分があると思います。教養や創造性においては君の方が数段上だと感じていますが、性質、考え方の傾向、面白がるポイントが似ている。だから、君と一緒にいる時間は楽しくもありましたが、何よりも自然でした。くだらない話を吹っ掛けることに抵抗が無い、むしろいつまでもくだらない話をしていたい、かといって話したいことが無ければ隣で黙っていてもあまり気を遣わない、そんな相手です。迷惑でしょうが、僕なりの親愛の表現です。

君と出会って以来、双方ともに所謂「フリー」である時期はほとんどなかったので、そっち方面でどうということはありませんでした。僕としては君に対して多少とも異性としての魅力を感じてはいましたが、いずれにせよ僕たちはそういう風になるべきではなかった、とは考えています。僕たちの似ている部分は人間としてあまり良くない、暗い性質にも及んでいるので、それが重なり合ってしまう時、僕たちはお互いを幸福にするようには作用できないのではないかと。

僕の配偶者は、あまり僕とは似ていないと思います。趣味(hobby/taste)の傾向は近いものがありますが、考え方や性質が似ているとは思えません。なので多分、彼女は僕の本尊の部分をあまり深く理解していません。僕がどのような論理で何を考えどう感じて何を欲しているか、ということについては、君の方が鋭く洞察してくれるでしょう。

でも、結果的には、こんなものかなと思います。

僕は正直に言って結婚そのものには興味なかったし向いてもいないですが、それでも「まあいいか」と思えた決め手があるとすれば、それは共通点よりも相違点、配偶者の内にある「自分にないもの」でした。彼女はある面において、僕が獲得し得なかった、非常に健やかなものを持っている。そこに結婚の先にある人生の調和を期待しました。

なので合わない部分も多々あるのは当然で、日常的には不満もあります。お互い様です。それに、どうせ僕は、どう生きても生きづらいのですから。

君はどうですか。彼も聡明で繊細で、君と共通点は多いと思います。ですが、ほんの少し、君の中心を微妙に外してくる部分に、苛つきながらもある種のバランスを得ることはありませんか。

彼よりも僕の方が君を理解している、などということは無いでしょう。ただ、救いは案外そういうところにある、ということを言いたいのです。

ある時期、君は本当に、存在が揺らぐほどに弱っているように僕には見えました。当時僕も自分のすべきことから逃げて時間をだぶつかせていて、何度か君を誘い出したりした記憶があります。あの頃、君は僕を利用したかもしれません。それはいいんです。多分僕も同じか、ことによったらより悪質かもしれない。

僕は僕なりに大切な友人をどうにか支えたかった、そこに嘘は無い一方で、僕も僕自身を正当化しながらどうにか日々を切り抜ける必要があって、その手の差し伸べ方は未熟で不器用なものだったと今では思います。短期的にも長期的にも君のためになったのか、そのことについては申し訳ない思いです。

ともあれ、君も(僕より先に)結婚して、配偶者と支え合って、子を守る強さを得たでしょう。少なくとも僕には、そのことを君に期待する義務があると思います。いつまでも「あの頃の弱い君」を君から引き出そうとして、傷のなめ合いを持ち掛けるのはフェアじゃない。

君に連絡を取りたくなることはたまにあるのですが、そんな思いもあり、なかなか踏み出せないことも多いです。